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表 紙 | 説 明 | |
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秋元書房ジュニアシリーズ63![]() |
書 名:風の中のエミリー 原 題:Emily of New Moon 著 者:ルーシー・M・モンゴメリ 訳 者:村岡花子 初 版:S34.01.15 備 考:原書は1冊なのだが、秋元書房からの日本語訳版刊行に あたり、ページ数の関係で前後編に分けられた。 前編が本書、後編がNo71「雨に歌うエミリー」 | |
『 風 の 中 の エ ミ リ ー 』 に つ い て 『赤毛のアン』の作者モンゴメリー女史が、「アン」とは全然別の構想のもとに、「アン」以上の情熱をそそいで書き下ろした未発表の長篇小説。 空想家で、文学少女のエミリーは、両親に死なれ、親族会議の結果、亡き母の生家である、マレー家の「ニュー・ムーン農場」に引き取られます。そこには、一族のボスであるエリザベス伯母さんと、親切で、理解のあるローラ伯母さんと、園芸の好きで無欲な詩人ジミー伯父さんとがいます。エリザベス伯母さんは非常にやかましく、エミリーの子供らしい自然の欲求を、一切おさえつけてしまいます。髪型から、服装、言葉づかいにいたるまで、レディらしさに反することを禁止します。芝居も、映画も、小説を読むことさえ許してくれません。 | ||
エミリーはこの伯母の家から学校に通いますが、学校も決しておもしろいところではありません。受け持ちのブラウネル先生は、やせていて、血色がわるく、出っ歯で、生徒を皮肉ってばかりいて、意地悪です。エミリーは新学期の第1日目に先生に抵抗してしまい、それ以来にらまれます。同級生も意地悪するものがいるかと思うと、親切そうに見せかけて裏切るものがいます。 しかし、月日がエミリーの悩みを解決してゆきます。エミリーに淡い思いをよせるボーイフレンドのミラーや、いつも喧嘩ばかりしている医者の娘バーンレイなどの友情につつまれて、大人の世界にふみこむのですが…… |
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主 要 人 物 エミリー・バード・スター ―― この小説の主人公。空想家だが、忍耐力と闘志に富み、読書と物を書くことが好きである。 ダクラス・スター ――― エミリーの父。かつては大雑誌「エンタプライズ」の編集次長。肺を患って死亡する。 エレン・グリーン ――― エミリーの家の女中。づけづけいうたちだが、正直で親切。 ル ス ・ ダ ッ ト ン ―― エミリーの母の姉。背が低くて、冷たい感じのする老嬢。 エリザベス・マレー ―― マレー一族のボス。背が高くて威厳があるが義務心が強く、古い時代の思想のかたまりのような女性。 ロ ー ラ ・ マ レ イ ―― エミリーの母の姉で、青い目の美しい中年の婦人。やさしい性質のため、一族の中では勢力がない。 ジ ミ ー ・ マ レ イ ―― エミリーの従兄。快活で詩を作ることが好き。 ブ ラ ウ ネ ル ―― 学校の先生。出っ歯で血色が悪く、生徒には非常にきびしい。 イルス・バーンレイ ―― 無神論者の医者の娘。おてんばで気まぐれ屋さんるよく学校を休む。 ローダ・スチュワート ―― エミリーの同級生。 テッディ・ケント ―――― エミリーが好きな少年。おとなしく、絵がうまい。 |
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巻 末 訳 者 解 説 よ り ここに私が「風の中のエミリー」と題してお送りするモンゴメリ女史作の長編は原名を"Emily of New Moon"と言います。ニュー・ムーンは牧場の名で、つまり「新月牧場のエミリー」なのですが、エミリーが風のように自由で自然である点を強調して、私は「風の中のエミリー」と題しました。 原作者L.M.Montgomery(モンゴメリ)は日本をこめて世界中に愛読されている「アン・ブックス」の作者です。モンゴメリは1874年、カナダのプリンス・エドワード島州のキャベンディッシという小さい町に生まれ、1942年4月24日に世を去りました。アン・ブックスの中にアボンリーという名で出ているのがこのキャベンディッシの町です。 1874年と言えば、デンマークの大童話作家アンデルセンの死んだ年の1年前です。アンデルセンが全世界の人々に愛され、デンマークの誇りになっておりますように、モンゴメリはカナダ国民が最も愛し、誇りとしている作家の一人です。そして彼女の作品の中で最も有名なのは、もちろん、アン・ブックスです。この一連の作品を日本に初めて紹介したことを、私は生涯の喜びとしております。 さて、モンゴメリはアン・ブックス(アボンリー・ブックスとも呼ばれています)のほかにもすぐれた作品をのこしておりますが、エミリー・ブックスもその代表的なものです。 1914年から1926年にかけてモンゴメリはアン・ブックスの中の2冊「アンの愛情」(Anne of the Island)と「アンの夢の家」(Anne's House of Dreams)のほか5冊を書きました。「風の中のエミリー」、「エミリーは登る」、「エミリーは求める」の三部作はこの時期の作品です。この三部作はカナダ文学おいて高く評価されていいものです。一般にアン・ブックスがほかのどの作品よりも著者ルウシー・モード・モンゴメリの自伝的小説としてみとめられてはいますが、まるで書くために生まれて来たように、幼い時から創作に熱中したルウシー・モンゴメリのことを思い合わせながら、エミリーとアンを比べてみますと、この性格はアンの中よりも、エミリー三部作の方に、より強く出ています。 もちろん、ルウシー自身の中にはアンの性格が多分にあったのは確かですが、そのアンのありかたはエミリーの中にも多分に含まれています。つまり、ルウシー・モード・モンゴメリの作家としての姿はアンよりもエミリーの中にはっきりと浮きぼりされているのです。 エミリーとアンでは、エミリーの方が作者モンゴメリに似て描かれています。アンは赤毛でそばかすだらけになっていますが、少女時代から中年にかけてのモンゴメリは「風の中のエミリー」のように、黒い髪の持ち主だったそうです。 マクドナルド牧師夫人であったL.M.モンゴメリ女史の令息チェスター・カメロン・マクドナルド氏は「白髪になるまでは母の髪は黒かった」と言っています。 とにかくこういうわけで、アン・ブックスとはまたちがった意味で、エミリー・ブックスには特別のおもしろさがあります。その第1冊目を秋元書房から出版するのが1959年の私の最初の仕事です。日本に初めて紹介される少女エミリーを、どうぞ、みなさま、親しみ愛して下さい。 1959年1月
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