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表 紙 説 明
この作品について   文芸評論家 浅見 淵
 この長編小説は、昭和35年に、NHKのラジオ小説として書かれたものである。つまり、「朝の小説」として、毎朝放送されたものだ。そして、清純で、おもしろいラジオ小説として、たいへん好評を博した作品である。
 この作品がはじめて単行本になったとき、「茶目で、図太く、勉強ぎらい。いつもハラハラさせながら、ノビノビと育つ、ある末っ子少女の物語」と、出版社は帯の紙にキャッチ・フレーズを書いていたが、簡単にいうと、そういう作品である。
 父親はかつて大病をし、そのため、いまは健康を回復しているものの、三人姉弟の末っ子の娘が、成長して一人まえになるまで、はたして生きておられるかどうかと、たえず心配している。その結果、末っ子の娘がいとおしくてたまらず、つい甘やかして育てる。
 末っ子の娘は、このため、無意識に甘えてノビノビ育つが、そのかわり、男の子のようなやんちゃになる。力も強い。父親はそういう末っ子の娘が、また、かわいくてたまらない。が、娘の中学のPTAの副会長をしている母親は、娘がすこしも勉強しないので、高校にはいれるかどうかと、ひどく心配している。
 だが、そのうち、大学生の姉と兄とが、母親の心配に同情して、強制的に妹の勉強を見てやるようになり、妹もまた、あるときから、急に自主的に勉強するようになり、ちょっとしたその家庭の暗雲は晴れて、幸福で平和な一家の団欒はいつまでもつづくというのである。
 あきらかに、作者の尾崎一雄の家庭がモデルになっていて、母親もまた、尾崎夫人がそのままモデルにされている。三人の姉弟は、いま、みんなりっぱな社会人となっているが、作品にかかれているような時代の、それぞれの姿が正直に写されている。

他収録作品:「こおろぎ」「虫のいろいろ」「『母の日』のことなど」「木刀をつくる」「トラの話」「かまきりと蜘蛛」
尾崎一雄│小田原市曾我の自宅にて 昭和五一年四月


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