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表 紙 説 明
この作品について  立教大学助教授 福田宏年
 『しろばんば』は、作者井上靖の少年時代の姿を、作者自身がほぼ忠実に書いたものといっていいでしょう。 井上靖の父は、陸軍の軍医をしていたので、父が任地を転々としているあいだ、作者は郷里の伊豆の湯ヶ島で、おばあさんとふたりきりで、土蔵の中でくらしました。
 ここに描かれているのは、その伊豆の美しい自然のなかに育った、ひとりの少年が、しだいに自分をとりまく周囲に目を開いていく姿です。 少年にとって、父母のもとをはなれている家庭環境は、恵まれたものとはいえません。だからこそ少年は、大自然のなかに羽をひろげて飛びこんていくのです。また、一方では、若い叔母のさき子に母の姿を求めて、慕うのです。この少年の純粋な気持ちは、読者の胸に迫ってきます。
 都会の少年には想像もつかないでしょうが、風の呼吸を感じ取り、草の匂いをかぎわける洪作少年の鋭い感覚には、なにか原始の本能と呼んでもいいものがあります。この鋭い感覚がのちに磨きあげられて、数多くのすぐれた作品を生み出したのだといえましょう。
井上 靖│東京世田谷の自宅にて 昭和四〇年夏
中 央 公 論 社 版 ( 昭 和 5 5 年 4 月 新 装 版 )


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