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表 紙 説 明
 北海道で、上高地で、そして修学旅行ではじめて知ったはかない恋。17才という人生でもっとも夢みがちな時に焦点を向けた四つの初恋!
 人生には幾山河の果てしない波瀾があります。この小説は、17才という人生でもっとも夢みがちな年代に焦点を向けた、四つの初恋物語です。といっても、ちょっと変わった構成で、その四つは、どれも独立した物語でありながら、全体は一つの長篇小説にもなっています。
 ていねいにかみしめて読んでくだされば、きっとあなたは、たとえば、第一話の登場人物と第四話で、ひょっくり二度目の「ご対面」をすることでしょう。
 北海道旅行の途中でふと知りあった青木梢と海老名冬男。二人の間に芽ばえた初恋は、どのように進展したのでしょう。 上高地で姉の秘めたロマンスを知ると同時に二浪で快活な集二という青年と仲よしになった牧村まゆみ、彼女の初恋は、虹のようにはかなかったのでした。 修学旅行で急病になった仙石弥江は、他の高校の男生徒の輸血で助かったのですが、命の恩人が二人も現れました。 派手好きで美人の原野節子は、不良大学生とあぶない恋の橋を渡りかけます。

   はじめに
 幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ國ぞ今日も旅ゆく――牧水の有名な歌から、この小説はうまれました。人生には幾山河の果てしない起伏や曲折・波瀾があります。かりに、17才という、人生でもっとも夢みがちな年代に焦点を向けて、四つの物語をつくりました。
 これは、ちょっと変わった小説です。四つの物語の、どの一つも独立したものでありながら、同時にちゃんと一つの長編小説にもなっています。一字ずつ、ていねいにかみしめて読んでくだされば、きっとあなたは、たとえば第一話の登場人物と第四話で、「誰かと誰かが」ひょっくり二度目のご対面をする、いったような楽しみが、この小説には仕組まれています。
 そして、読みながら楽しみ、楽しみながら若い人生の知恵をこの物語のなかから汲みとってくださるなら、作者はたいへんうれしいと思います。
                          藤 井 重 夫
   主要人物
青木 梢――緑ガ丘高校3年生。両親は北海道で牧場を経営していたが、幼い梢を残して他界。そのため、東京の叔母のもとで育てられてきた。
海老名冬男―東京Q大3年生。函館出身。下宿生活をしながら大学に通っている。
牧村立子――東京丸ノ内の大東商事に勤めているB・G。山好きだがひかえめな女性。
牧村まゆみ―立子の妹。短大1年生。姉と二人でアパートを借りている。
旗野一郎――大学を出たばかり、横浜で父の商売を手伝っている。山好きの青年。
旗野集二――一郎の弟。二年つづけて第一志望の大学をドロップし、いまは予備校がよいの二浪。
山名 学――大阪R高校2年生。学校の成績も良い真面目な生徒。
早川洋太郎―学のクラスメートでいたずら好き。
仙石弥江――兵庫県T高校2年生。山陰の城崎温泉湯島屋旅館の娘。小さいときから体が弱い。
原野節子――緑ガ丘高校3年生。美人で派手な性格。
甲田十三子―節子と同級。ミス・緑ガ丘といわれるほどの美人。
佐々木俊太郎―東京Q大3年生。海老名冬男の親友で、いっしょに下宿して大学に通っている。