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表 紙 説 明
秋元書房ジュニアシリーズ104
書 名:高校同級生
原 題:The Luckiest Girl
著 者:ビヴァリ・クリアリイ
訳 者:田中西二郎
初 版:S35.05.15  再版:S37.11.30
備 考:翻訳権所有
   『 高 校 同 級 生 』 に つ い て
 シェリは16才。新学期の生物の時間に、とてもすてきな男の子と隣あわせになりました。彼はフィリップという名で、バスケットボールの選手で、学校じゅうの女の子が熱をあげていました。シェリも、たちまち彼の魅力にひきつけられてしまいましたが、彼女には、ハートレイというボーイフレンドがいたのです。
 学校新聞のインタヴューをうけた時、シェリは、大胆にも、生物の単位をとっているバスケットボールの選手が好きだ、と言ってしまったのです。それが機となり、二人の間は急速に深まり、デイトするようになりました。シェリは、今まで味わったことのない新しい世界が開けたような気持ちになりました。
 だが、彼女の幸福も長くは続きませんでした。学期末の成績で、シェリは生物がC、フィリップは落第点をとってしまったのです。そのため、フィリップはバスケットボールの選手をやめなければなりませんでした。
それから先、シェリは再び幸福をつかんだでしょうか?
物語はさらに発展して行きます。
    主 要 人 物
シェリ・レイザム ―― この物語の主人公。オレゴンのハイスクールの女生徒で16才。1年間カリフォルニアのサン・セバスチアン・ハイスクールに転入学して、理想的な男の子と夢のような交際を続ける。
ジ ャ ッ ク ――― オレゴンのハイスクールでのシェリのボーイフレンド。
ローズマリー ――― オレゴンのハイスクールでのシェリの親友。
メ イ ヴ ィ ス ――― シェリの母のカレッジ時代の親友で、シェリは1年間そこで生活する。
ト      ム ――― メイヴィスの夫。ハイスクールのバスケットボールのコーチ。
ル  ー  ク ――― メイヴィスの息子で15才。
ケ イ テ ィ ――― メイヴィスの娘で13才。
ハ ー ト リ ――― サン・セバスチアン・ハイスクールの男生徒で、ジャーナリスト志望。
フ ィ リ ッ プ ――― サン・セバスチアン・ハイスクールの男生徒で、バスケットボールの選手。女の子にすごい人気がある。
ジ ャ ニ イ ――― サン・セバスチアン・ハイスクールの女生徒。
エリクソン先生 ――― サン・セバスチアン・ハイスクールの生物の先生
   巻 末 解 説 よ り
 内村直也氏の訳された『十五才の頃』を読んだ方は作者のビヴァリ・クリアリイさんが、ティーン・エイジャーの心理を誰よりもよくつかんでいることに驚かされたことと思います。この『高校同級生』が日本で紹介されるクリアリイ女史の2冊目の本だというのは、ちょっと意外な気がします。なぜなら女史は、ジャーディン、エマリイ、カヴァナなどと並んで、アメリカのハイティーン文学の代表的な作家の一人だからです。秋元書房がこの本に引き続き、クリアリイ女史の小説を次々に出版していくことを企画しているのはよろこばしいことです。
 さて、『高校同級生』の原名は“The Luckiest Girl”です。オレゴン州の故郷の家から両親のもとを離れて、高校2年生の1学年間を、南カリフォルニアのサン・セバスチアンという小さな町ですごすことになって16才のシェリ・レイザム――彼女はなぜあたしはサン・セバスチアンで誰よりも幸運な少女だ≠ニ思うようになるのでしょうか? 友だちのジャニイが批評するように、彼女はこのはじめての町で見るあらゆるものに目をまるくして$V鮮な好奇心をわかせ、はじめての経験のすべてに胸をおどらせます。カリフォルニアで生まれた他の生徒たちにはすこしもめずらしくない風物や行事や習慣が、みんなシェリにはめずらしいものでした。そして、新しい経験、新しい生活の中でピチピチと元気に行動していくことによって、学校じゅうの女生徒がボーイフレンドになりたがっているバスケットの花形選手フィリップからデイトを申しこまれるという幸運≠つかむことになったのでした。
 誰よりも幸運な少女≠ニいうのは、だから、シェリという少女が自分は誰よりも幸運だと思いこんだから、そうなった、ということにすぎないのでした。その証拠に、フィリップは――内気で、人なつこい、親切な少年でしたが――シェリが自分の空想のなかで逢いたいと思っていた少年とはちがうことが、まもなくシェリにもわかって来ました。サン・セバスチアンでのシェリの1年間の生活は、したがって、誰よりも幸運な少女≠フ生活ではなくて、子供から大人になりかけている、ごく普通な、誰とも同じような少年<nートリとの、しみじみとした愛情の思い出を抱いて、シェリは、両親の家に帰ることになります。ひとり娘を手放して、故郷の町ではとても味わえなかったような経験をさせてくれた両親にこそ、シェリは感謝すべきではないでしょうか。
 またそういうめずらしい経験は、やっぱり平凡な少女シェリ・レイザムに誰よりも≠ナはないとしても幸運な′o験だったに違いないのです。クリアリイ女史は、そうした、ごく普通なアメリカのティーン・エイジャーの夢と現実とを、こまかに、生き生きと描きわけてみせてくれます。
 雨の日のジムナジウムで行われたバーン・ダンス、フィリップの出場できなくなったバスケットの対校試合、ハートリと一緒に行ったカーニヴァル……シェリの高校生活のよろこびや悲しみが、とりわけあざやかに、読み終わって印象に残ります。

 著者のビヴァリ・クリアリイ女史はオレゴン州の生まれで、ポーランドの高校を経てバークリのカリフォルニア大学を卒業してから、さらにシアトルのワシントン大学で児童図書学を専攻し、1939年にワシントン州ヤキマで児童図書館長になり、翌40年に結婚し、カリフォルニア州オークランドに移り住みました。第二次大戦中はオークランド陸軍病院の図書館に奉仕しました。1950年に『ヘニリ・ハギンズ』を出してから、毎年1冊、ティーン・エイジャーを対象として長編小説を発表し、この方面での専門作家として認められるようになりました。その7冊目に当たるのが1956年の『十五才の頃』で、この『高校同級生』は9冊目、1958年の作品です。
田 中 西 二 郎