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表 紙 | 説 明 | |
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秋元書房ジュニアシリーズ102 |
書 名:すてきな夏休み 原 題:Star Island 著 者:マージョリ・ホール 訳 者:泉 知恵子 初 版:S35.04.15 備 考:翻訳権所有 | |
『 すてきな夏休み 』 に つ い て 兄妹がおおぜいの家では、だれかひとり、ぽつんと忘れられた存在になってしまうものがいるものです。この小説の主人公キャロリンは高校最上級生で、6人姉弟の次女ですが、はにかみやで消極的な性格のため、姉のリズや妹のマータのように男の子からデイトのさそいをうけたことがありません。知らない人は、失礼にも、マータの妹だと思っています。両親は頭が弱いのではないか心配したこともあるほどです。そのキャロリンがある日、とんでもない決心をしたのです。 それは、スターアイランドという島のキャンプに、世話係としてのアルバイトにいくというのです。しかも、一家で一番手をやいている9才の妹、スージーまで連れて行こうというのですから、みんなの驚きはひと通りではありません。一家は、その年の夏も、例年のように、岬の別荘に行くことになっていたのですが、なぜキャロリンが行きたがらなかったか、それは彼女だけしか知らない心の秘密とでもいうべきでしょう。キャロリンは、岬に行っても、姉や妹のようにデイトができないし、ひとりぼっちのわびしい気持ちを味わわなければならないからでした。それなら、いっそのこと、男の子もいない島にでも行ったほうがいいと思ったからなのです。そしてスージーのために行くといえば、面目もたつからでした。 そんなわけで、高校最後の夏休みを、彼女は島でおくることにしたのですが、ああ、なんと皮肉なことに、そこにも男の子がいたのでした……… しかし、キャロリンは、夏の終わりにすてきな初恋をしたことだけは、お知らせしておきましょう。 | ||
主 要 人 物 キャロリン・ウィンスロップ ― この物語の主人公。トムスン高校の最上級生で18才。肺炎で1年休学した。 リズ、マータ、スージー ― リズは、キャロリンの姉で19才、ケンシントン大学2年生。マータは、キャロリンの妹で17才、トムスン高校の最上級生。スージーは、キャロリンの妹で9才。 ロ ー ズ マ リ ー ――― キャロリンの親友。 メアリー・アール ――― 『キャンプ・スター・アイランド』の経営者。 ブラッド・フォード ――― みんなから先生と呼ばれているキャンプ専属の医者。 ジ ェ イ ン ―――――― ブラッド・フォードの奥さん。 ジーン・スティッシー ―― 手芸担当のカウンセラー(世話係)。 ヴァージニア・ブラウン ―― 自然研究担当のカウンセラー。 ゼルダ・ファラー ――― 音楽担当のカウンセラー。 ジョージアンナ・ガウ ――― 水泳担当のカウンセラー。 キッティ・マーティン ――― キャロリンと同じ町に住む未亡人の子供 ケン・ブライアント ―― 男子キャンプのカウンセラーで誠実な青年。 フラッシ・ゴードン ―― リズやマータのボーイフレンド。 |
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巻 末 解 説 よ り この小説は、ミス・マージョリ・ホールの第11冊目のジュニア小説です。 ニューヨーク州のトムスン市の裕福な弁護士ウィンスロップ家には、西部の大学生の長男と、幼児の末の男の子のあいだに4人の娘がいました。次女のキャロリンは18才で、肺炎のため1年おくれて、今度高校を卒業するのですが、美人で陽気な姉と妹の間にはさまれて、精彩のない、影のうすい存在となっています。ほとんど、デイトなどしたこともなく、内気で、純情で、まじめで、母を助けて家事にも精を出しています。 しかし、愛情の深い父母と、大勢のきょうだいに取りかこまれていても、彼女は、なんとなく不幸で、孤独です。ひそかに詩を書こうと夢みたり、毎夏、家じゅうで出かけるビーチヘイブンの海岸で見かける、小さい古い家を手に入れて、一人でそこに暮らそうと空想したりしているのです。そして、ただひとりの親友ローズマリーの一人娘の境涯をうらやましがったりします。 そのキャロリンが、夏休みに、レヴェレイション湖の中にあるスター・アイランドという島のキャンプ場に、カウンセラー(世話係)のアルバイトに行く決心をしたのは、衝動的な気持ちからで、決定してからも、まったく自信がなく、なかば後悔を感じたほどでした。まして、あてにしていたカウンセラー主任の、ミス・エリザベスが、家庭の事情から行けなくなり、彼女が代役を引きうけねばならなくなった時は、ただ当惑するばかりでした。 ともかく、彼女は、給料のかわりに、甘ったれで、困りものの9才の妹スージーを無料のキャンパーとして連れて行き、また、彼女の推薦で、カウンセラーとなったローズマリーは、同じ町に住む未亡人の子で、いじけて、体の弱いキッティとしう女の子を連れて行くことになりました。 しかし、美しい高原の湖の小島での8週間にわたるキャンプ生活は、スージーやキッティをはじめとする幼い子供たちに、驚くような変化をあたえました。キャンプ場に初めてきたとき、ホームシックのために泣いた子供たちは、夏の終わりのわかれのパーティ≠フ時には、また別の意味で涙を流しました。そして、キャロリン自身も、この8週間でおとなへと大きく成長し、最初にして、おそらく最後の恋を経験したのでした。 ここには、女ばかりのキャンプ生活の特殊な雰囲気を通じて、年頃の少女の心の中に宿る、異性に対する慕情、女どうしの友情、姉妹愛などが、時にはみにくく、時には美しく、入念な写実的な筆致で描かれています。 作者のミス・マージョリ・ホールは、ティーン・エイジャーに対して、非常な関心と理解をもっており、かつて、婦人雑誌の編集員をしていたころは、ティーン・エイジの問題について、読者の質問に答えたり、多くの論文を発表したりしました。また、2年にわたって、ボストンの新聞に「十代の人々と語る」という週2回のコラムを担当したこともあります。 そのため、女史が発表した小説は、いずれもアメリカのティーン・エイジャーから圧倒的な人気を得て、ベストセラーとなっていますが、日本で紹介されたものは、この『すてきな夏休み』とすでに秋元書房から発売している中村能三先生訳の『ハイティーンの悩み』の2冊です。 1959年12月
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