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表 紙 説 明
秋元書房ジュニアシリーズ96
書 名:美しき惑い
原 題:MARCY CATCHES UP
著 者:ロザモンド・デュ・ジャーディン
訳 者:大久保康雄
初 版:S35.01.15
備 考:翻訳権所有
   『 美しき惑い 』 に つ い て
 「今年の夏休みは、あたしの叔父さんの牧場にいっしょに遊びに行かない?」と親友のリズに言われた時、マーシイは一も二もなく承知してしまったが、 ボーイフレンドのスティーヴから猛反対にあってしまった。夏の一ヵ月を自分と離れていても平気だというのは愛情がない証拠だというのだ。マーシイはステイーヴの言うことを聞いているうちに、彼のエゴイズムに腹が立ってしまった。もうこれ以上束縛されるのは沢山だと思ったので、スティーヴと口をきかないことにした。
 マーシイとリズはとてつもない夢をいだいて牧場に行った。西部劇にでてくるようなはてしもない高原、そして、そこにはスティーヴなんか足もとにも及ばないようなハンサムな青年たちがいるにちがいないと……。
 リズの叔父さんの家では、一家をあげてマーシイたちを歓迎してくれたが、二人はもの足らなかった。親切にあちらこちらを案内してくれるのだが、都会育ちの二人は疲れるばかりだった。それにカンジンの青年はどこにもいなかった。男性といえば、リズの従弟たちしかいない。しかも彼等はまだ小学生なのだ。
 マーシイはすっかりホームシックにかかってしまった。いまではスティーヴの言う通りにしなかったことがくやまれてならなかった。今頃は彼と楽しくデイトしていたであろうに、まつわりつく子供のお相手をしなければならないのだ。
 だが、あきらめるのはまだ早かった。或る日のことだ。突然二人のハンサムな青年が二人の前に現われた。そして…………
    主 要 人 物
マーシイ・ローデス(マース)この物語の主人公。ウェストフィールド高校生で、17才の少女。
ケン・ローデス ―――― マーシイの兄。
スティーブ・ジャドソン ――― ケンの小学校時代からの親友で、マーシイのボーイフレンド。
リズ・ケンダル(リジー) ― マーシイの一番仲良しの少女。
ジェイス・ケンダル ――― リズの叔父で、西部で牧場を経営している。夫人のゾイ・ケンダルとの間には、チャック(12才)、サム(10才)、ウイ(7才)の三人の男の子がいる。
ノエル・クレイマー ――― 『バー・S』という牧場を経営しているクレイマー家の長男で19才。
タック・クレイマー ――― ノエルの弟で17才。タウンシップ・ハイスクールの最上級生。
シンデイ・ベリス ―――― ノエルのガールフレンド。
   巻 末 解 説 よ り
 ロザモンド・デュ・ジャーディン女史は、アメリカのカレッジ生活やハイスクール生活を背景にした小説を、たくさん書いていますが、そのなかでも、トベイ・ヘイドンという女子高校生を主人公にした一連の作品と、マーシイ・ローデスという、これも女子高校生を主人公にした一連の作品とが、とくに人気があり、もっともよく読まれているようです。それぞれ主人公の名を冠して「トベイ・ヘイドン・シリーズ」「マーシイ・ローデス・シリーズ」とよばれていますが、『十七才のデイト』『クラス・リング』『ボーイ・フレンド』などは、もちろん前者の作品であり、『としごろ』や、ここに訳出した『美しき惑い』などは後者にぞくする作品です。

 この小説に登場するマーシイは、すでに17才、ハイスクールの最上級生です。17才というのは、いわば首だけをおとなの世界に突っこんで、足はまだ子供の世界にあるという、まことに中途はんぱなとしごろです。マーシイも、自分では、りっぱに一人前のおとなになったつもりでいますが、周囲のものは、父や母や兄をふくめて、誰も彼女をおとなとは認めてくれません。いつまでも子供あつかいなのです。17才になった彼女が、もっともくやしく思い、いちばん腹が立つのは、このことです。マーシイは、お化粧の方法を変えてみたり、着るものや持ちものに工夫をこらしてみたり、なんとかしておとなっぽく見せようと、あれこれ苦心するのですが、効果があったのはボーイ・フレンドのスティーヴくらいなもので、それ以外の人たちは無神経にも依然として彼女の変化を認めようとはしないのです。

 そこへ降ってわいたようにおそいかかってきたのが結婚という問題です。17才の少女にとって、結婚ということは、それほど遠い将来のことではないにしても、それほどさしせまった問題ではないはずです。結婚を考えないものはないでしょうが、しかしそれは、いわば霧につつまれたロマンスの世界の問題であって、いますぐ解決をせまられる現実の問題ではないのが普通でしょう。
 その結婚の問題に、じかに対面させられたマーシイは、これについて、どう考え、どのように惑い、どのように対処したでしょうか。これが、この小説のテーマになっています。ジャーディン女史が、その作品のなかで、正面きって結婚という問題をとりあげたのは、おそらくこれがはじめてと思われます。その点、これはきわめて特異な作品といえましょう。《中  略》

 終りに近く、マーシイがノエルとのいきさつを母親にうちあける場面がありますが、ここのところは、とくに注意して読んでいただきたいと思います。というのは、この母と娘の対話から、いわゆるアメリカ的良識というものを、はっきりとくみとることができると考えるからです。

   1959年12月
訳   者