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表 紙 説 明
秋元書房ジュニアシリーズ82
書 名:含 羞 草
原 題:La Sensitive
著 者:ミシェール・ペラン
訳 者:大久保和郎
初 版:S34.07.25
備 考:翻訳権所有
     1957年、フランス文学界の賞「カトル・ジュリー賞」受賞。
   『含 羞 草』に つ い て
 『含羞草』の作者はまだ23才の女子大生です。そして、これは処女作ですが、批評家たちからは『悲しみよこんにちは』以上の傑作と絶賛され、フランス文学界最高の賞ともいうべき「カトル・ジュリー賞」を1957年に獲得しました。
 小説の題名『含羞草』とは日本の「ねむの木」にあたる植物で、感覚の鋭い女性という意味があります。この小説は感覚の鋭敏な、自尊心の高い、だが、いかにも女らしい一人の女子大生オディール・シャルメの愛の記録です。ここには現代フランスの学生生活がいきいきとありのままに描かれています。
 オディールは、高等学校から大学在学中までに、3人の男の学生と知り合った。そして、その3人に対する彼女の気持ちもそれぞれ違っていた。ジョゼは高校の同級で、画学志望であった。オディールは彼にすべてを捧げたいと思った。そして婚約までしたのだ。女優になりたいと思っていた希望もすてて、ボルドー大学の法学部に進んだのも、ジョゼのためだった。彼はやがてパリに絵の勉強に出かけていった。
 ボルドー大学医学部のグロはオディールをあたたかい愛情でつつんでくれた。彼女もグロに好意をよせていた。彼は「もし君がその気になりさえすれば、自分は君と結婚する気だ」と言いのこしてパリに行ってしまった。法学部で、学生連合の委員長のヴィエルマもオディールを深く愛していた。しかし、彼はいかにも粗野な男であった。その反面、気の弱い彼は、ジョゼと彼女の間に入って自殺してしまった……
 この小説は、人生に理想を描いていた少女が、恋愛を通して人間の複雑さに開眼していく過程を描いた傑作です。
    主 要 人 物
オディール・シャルメ ―― この小説の女主人公。ボルドー大学法学部の学生。美しく聡明だが内向性が強い。
ジョゼ・マルサン ―――― オディールの高等学校の同窓で婚約者。絵の勉強のためにパリに行く。長い別離に飽いて一度オディールに婚約解消を申し込むが、それを取り消し、最後になって決定的に離れて行ってしまう。
ピエール・ダスク(グロ) ― ボルドー大学医学部学生。温厚で明るく、オディールと相愛の仲になるが、彼女の方は踏み切れない。オディールがその気になれば結婚しようと約してパリへ遊学する。
ジャーク・ヴィエルマ ―― ボルドー大学の「学生連合」委員長。粗野だが気が弱く、オディールに恋し、ジョゼとグロに去られた彼女の孤独につけこんで手に入れるが、ジョゼに彼女を取り戻されそうになって自殺する。
マルチルー先生 ― オディールの高校時代の教師。古典悲劇への趣味を彼女に植えつける。
グ ル ッ セ ―― 妻子ある医学部の学生で、夫婦でオディールをヴィエルマから守る。
イ ヴ ァ ン ―― オディールに忠実にかしずく学生。

含  羞  草 ―― 南仏の原野にほとんど自生している灌木。触るとちぢむ。樹皮に有毒成分を含む。