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表 紙 説 明
秋元書房ジュニアシリーズ37


新刊紹介での表紙デザイン
書 名:エデンの姉弟
原 題:La Premiere Ile
著 者:マルセル・シュナイダー
訳 者:斎藤正直
初 版:S33.01.15
備 考:
   『 エデンの姉弟 』に つ い て
 愛とは何人も立ち入ることの出来ない二人だけの世界でしょうか?
この小説はあまりにも清純な、そしてあまりにも美しい愛を求めたために、森の泉のほとりで死を選んだ双児の姉弟の物語です。
 ローランスとピックスは16才になる双児の姉弟であった。姉のローランスは野性的で勝気な少女で、弟のピックスは内気で気立てのやさしい性格の少年であるが、二人は幼い時からじつに仲が良かった。姉弟というよりむしろ恋人同志のようにお互いをいたわりあい、愛しあっていた。二人は今は亡き美しく信仰心のあつい母ブランシュから、アダムとイブが人間の最初の純粋な愛をちぎりあったエデンの島が、この地上にもあることをきかされ、今もそれを信じて疑わなかった。
 姉弟は夜が来ると一つのベッドで、ねむの木の葉のようにぴったりと手をかさね、恋人のように抱き合って眠り、双児として別々の性をもった自分たちが、一つの魂一つの肉体となることを夢見るのであった。二人の愛情は純粋無垢でその魂も肉体も罪やけがれの意識とは無縁であった。しかし、やがて思春期の衝動がまずピックスを襲い、ローランスに対して今までどおりに素直な気持でいられない自分を知って深くなやむようになった。まもなくローレンスも、新しく学校へ転入してきたシルヴァンに会ってから、その少年にふしぎな魅力を感じるようになった。禁断の木の実を食べたアダムとイブのように、ローランスとピックスの愛の巣≠ノ悲しい宿命の触手がしのびよってきた………
 母親がなく、オールドミスの叔母と父親だけの冷たい家庭に育ったローランスとピックスの双児の姉弟は、子供の時から特に仲が良く、16才になっても森の中に二人だけで遊べる秘密の洞窟を見つけたりします。しかし叔母は姉弟の愛を理解できず冷たい監視の眼を光らせます。
 その頃ローランスは高校の学芸会でシルヴァンという美しい少年と知り合い、しばしばデイトをしたりします。そしてローランスにとってはもはやシルヴァンが忘れられない人となりましたが、弟のピックスは姉の初恋を祝福すると同時に胸がはりさけるような思いに悩むのでした。しかし姉弟の美しい愛を知ったシルヴァンはやがて二人から去ってゆくのでした。二人の中にはシルヴァンも立ち入ることの出来ない神聖な世界があったのです。
 本書は、神秘と浪漫の香りにつつまれた、世にも美しい物語である。純粋な愛情に生きそして死んだ姉弟の物語は、読者の魂をきよらかな感動で洗い流し、罪と汚れになずんだ大人の世界に対して、無言の烈しいプロテスト(抗議)をおくっている。
    主 要 人 物
コンラット ―― 北ドイツの名門バルトベルグ伯爵家の生れだが、聖母像に似た美しいフランス娘ブランシュ・ボーシャンと結婚するために、ドイツを去りフランスに帰化し、やがて二人の間にローランスとピックスの男女の双生児が生れる。最愛の妻ブランシュが亡くなってから、子供たちのことは一切義姉のエミリーにまかせて、亡き妻の思い出の世界にのみ生きる陰鬱で冷たい性格に変る。
ブランシュ ─― 双生児たちが七歳のとき亡くなった母親。子供たちを非常に愛し彼らの無邪気な物の考え方や感じ方に強い影響をあたえた清純な美しい婦人。
ローランス ─― 本篇の主人公、双生児の姉。剣のように鋭い感じの美しい少女で、純真だが、かなり野性的な性格の強い性格の持ち主。七歳の時母を失い、エミリー伯母に養育される。
ピックス ─―─ 双生児の弟。姉とちがって気の弱いリスのような感じの美しい顔立ちの少年。母が亡くなってから、姉のローランスを唯一の力だのみとして尊敬し、熟愛している。
エミリー伯母 ― ブランシュの実姉で、妹と似ても似つかない醜い容貌の持ち主。母の死後ローランスとピックスを養育するためにパリからやってくる。コチコチの信心家。
レナート ─―─ ローランスのクラスに新たに転入してきた年上の少女で、陰険で意地悪な生徒。
シルヴアン ── レナートの弟。姉とちがって非常に気立てのやさしいロマンチックな性格の少年、ローランスに思慕をよせる。
 作者のマルセル・シュナイダーはドイツ系のフランスの作家で、1950年小説『緑の猟人』を発表してカーズ賞を授与され、現代仏文壇でもっともその将来を注目されている新鋭作家です。『エデンの姉弟』は彼の最近作で、パリのアルバン・ミッシェル社から出版され評判になった小説です。
 この小説の原題は《最初の島》と言い、アダムとイブの園を象徴したものですが、この作者はローランスとピックスという双児姉弟の純愛物語を通して、アダムとイブの現代的意義をさぐろうとしているのです。


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