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表 紙 説 明
秋元書房ジュニアシリーズ25
書 名:激流 ─ある愛の記録─
原 題:TORRENTS
著 者:マリ=アンヌ・デマレ  訳:大久保和郎
初 版:S32.06.25
備 考:ジュニア・シリーズには珍しい黄緑の背表紙、
     他にはNo11の若い娘アリアーヌ≠フみ
     本邦初訳、翻訳権所有
 この小説は若くして自殺した一人の女性の半生の物語です。若くして医者の妻となった彼女は、夢のように美しく幸福な生活をかち得たのですが、なぜ、はかなくその幸福が消え去ったのでしょうか。
 イデ・イヴァルセンの結婚は見合結婚でした。夫のヤンは医者です。彼女にとってヤンほど美しく、また精神的に優れた男はいませんでした。そしてヤンも彼女を信頼し、彼なりに深く愛してくれたのです。しかし、彼女にはたった一つ彼のことについて知らないことがありました。それは彼の青春の思い出、初恋の人のことでした……。
 シグリットは何年も前から家を出てアメリカやパリへと放浪旅行をしていました。彼女にとっては忘れることのできない一人の男性がいました。いや、その人の面影を忘れんがために彼女は旅行しているのですが……。それは、若き医学者ヤンでした。
つつましく生きながら遂に死を選ばねばならなかったヒロイン!
罪をおかしても愛の激流の中に生きようとする一人の女性!
ここには愛の激流をめぐって二人の女性の生きかたが対照的に描かれています。
    主 要 人 物
テレーズ ――― アルザス生れの少女。事故のために両親を失い、南アフリカの伯父を頼って渡航する船の中で、イデ・イヴァルセンの手記を発見する。
イデ・イヴァルセン ― ロッテルダムの小市民の家に生れ、はやくから父を失い、厳格一方の母親の手で育てられる。ヤン・イヴァルセンと結婚して南アフリカのトランスヴァールに赴く。情熱的献身的に夫を愛し、最後に恋仇のためにジャングルのなかに棄てられ、ブーア人の夫婦に救われる。7年間記憶を喪失していた後、故国へ帰ろうとしてハンブルグに着き、この港で海に落ちる。
ヤン・イヴァルセン ― スウェーデン生れの医者。オランダで医学を修め、嘗て自分を裏切った恋人シグリッドを忘れようとしてトランスヴァールに移住することを決心し、新聞広告で知ったイデと結婚する。美貌で、医者としても有能であり、女の患者にいろいろと附き纏われるが、嘗て心に受けた痛手と妻に対する忠実さから厳しく斥ける。しかしヨーロッパ旅行の際に久しぶりで故郷を訪れ、幼馴染であり不実な恋人であったシグリッドに会って、再燃しようとする嘗ての愛情と激しく闘う。
シグリッド・リンドヴァル ― ヤン・イヴァルセンの遠縁の娘。ヤンと子供の時から一緒に育てられ、愛し合うようになる。しかしヤンのオランダ遊学中に、ふとした気の迷いで彼の親友を相手に彼を裏切り、その現場を押さえられる。失った恋人を諦め切れず、放浪の生活を送ったのちにヤンに再会し、持ち前の奔放な激情をもって彼につきまとう。
マー(ママ) ─― イデの母親。実際的なことしか知らぬ気丈な女性で、夫の死後病院の付添婦をしながら子供たちを育てる。
ニタ・ホリス ─― イギリス人、ヤン・イヴァルセンの患者で、彼に執拗に求愛する女の一人。ヤンの厳しい拒絶に逢って、結局夫とともに英国へ帰る。
ニルス ――― ヤンとイデの間の子。あやまって水溜りに落ち、そのために原因不明の悪疫にかかって幼いうちに死ぬ。
 マリ=アンヌ・デマレ女史(1910年生れ)は今フランスで一番人気のある女流作家です。25才で「アルサス・リテレール賞」を与えられて以来、たくさんの長篇小説を発表しました。そして彼女の手法が最も完成された時の作品がこの『激流』です。
 『激流』は1948年最初に刊行されたとき、「アカデミー・フランセーズ賞」を受け、150万部を越える売れ行きを示しました。そして以来今日まで、ベスト・セラーを続け、映画化されました。若い女性の気持ちがそのまま描かれているところに、この小説の人気があるのでしょう。


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