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表 紙 | 説 明 |
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秋元書房ジュニアシリーズ23 |
書 名:ブライト島の乙女 原 題:Bright Island 著 者:メイベル・ロビンスン 訳:田中西二郎 初 版:S32.05.25 備 考:本邦初訳 |
サンクフルという変った名の少女は、ちょうどマリナ・ブラディをほうふつとさせます。つまりせん細な都会の少女ではありません。数マイル沖合にある小さな島に育ち、兄達は成人して本土に住んでいるのに彼女は島が好きで離れたがらないのです。教育者であった母のすすめで本土の高校へ入ったのですが
、何しろ始めて電燈が見はじめという程の田舎者です。ところが若いフレッチャー先生は、彼女が優秀な成績であるのを認め、親切に指導します。 或る日同室のセリナという金持の少女とボーイフレンドのロバートが溺死しそうになったのを救けました。それが機会で休暇には二人を島へ案内しますが、ロバートは島の自然に退屈してしまい、だんだん都会青年の軽薄さをばく露していくので彼の美しさにあこがれていたサンクフルもすっかりあいそがつき、キスされようとしたが断ります。それから後、母の危篤の時名医をつれて島へ駆けつけてくれたフレッチャー先生が、二人で海岸へ出たとき愛の告白をします。来年は英国へ留学するが結婚を待っていてくれという、サンクフルには大きな船の船長という大望を抱いている幼友達のデーヴという青年がいるのです。 | |
主 要 人 物 ベッシイ・レイ ― レイ家の次女・小説家志望の快活な少女。自分と正反対な「神秘的なドラマティックな」性格にあこがれている。 ジュリア ――― 2つちがいの姉。賢こく美しい。オペラ歌手になること、早く大人の世界に出て行くことを願っている。 マーガレット ― レイ家の末娘。りこうな、まじめな可愛いい少女。 テイシイ ―― ベッシイの無二の親友。はにかみやの、けれど茶目な少女。 ティブ ─―― もとベッシイ、テイシイと三人組だった。お伽話のプリンセスのように見えるくせに家庭的な聡明な少女。ミルウォーキーに住んでいる。 フィル ─―― 町の名家、ブランディッシ家の孫。自動車をもっている。気取りやで、大人っぽい。ベッシイの初めての恋愛事件の相手。 トニイ ─―― 天才的に歌のうまい学校ぎらいな呑気もの。1年の時、ベッシイが初恋を感じた少年。 キャブ ─―― 隣家の男の子。トニイ同様、始終レイ家に入りびたっている。 ジョオ・ウィラード ─ 孤児。学校一の秀才、ブロンドの美男。自活している孤独な誇りたかい少年。ベッシイは心の奥でいつでもその存在を意識している。 |
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裏表紙 解説より 『ブライト島の乙女』は人生の朝ぼらけに美しさを見だす若い人々と大人たちとの両方に親しまれる本です。これはある島そだちの少女、サンクフル・カーティスの物語で、この島は故郷として、たえず彼女に魔術のように呼びかけるのです。彼女はスコットランド生れの母親、メイン州生れの父親といっしょに、この島に住んでいますが、彼女に強い感化を与えているのは、いまは亡い、もと船長だった祖父で、4人の男兄弟よりも末娘の彼女のなかに、この老船長は再生しているのです。 ふるさとであるこの島、祖父の想い出に最も深くつながっている1隻のヨット、そして忠実なボーイ・フレンドのデーブ、それらと別れて、彼女は本土の高校へ入学します。島の生活とはかけはなれた、世間ずれのした人々ばかりの学校生活は、彼女にとっては、まるで海図のない海を航海するような困難なものでした。彼女をばかにしている同室生のセリーナとの交際や、朗らかで親切な男学生のロバートの魅力や、鋭い毒舌の持主で、しかも彼女にはやさしくしてくれるオリン・フレッチャー先生や、それらの人々との接触を通じて、どうにかこうにか、彼女は羅針盤の針をうまく調節することができたのでした。 この物語に登場する各人物は、みな忘れることのできない真実性をもって読者に迫ります。冬のきびしい天候の試練、おだやかな夏の海、ブライト島はそこに住む人々に、ごまかしのない真実で生きぬくことを強いるのです。ブライト島は、各人が、その生活と幸福とのために欠くことのできない、さまざまの要素を、自分で支配しながら生きてゆくという意味で、充実した生活の場としてのホーム≠ニいうものを象徴しているのです。 作者のメイベル・ロビンスン女史は、現在(当時)コロンビア大学英文科教授で、作家としても名があり、この「ブライト島の乙女」は、最近の十代を対象としたおびただしい小説の中で、文学的香気の高い傑作として注目された作品です。 |