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表 紙 説 明
秋元書房ジュニアシリーズ19
書 名:十七才のデイト
原 題:Practically Seventeen
著 者:ロサモンド・デュ・ジャーディン
訳 者:大久保康雄
初 版:S32.02.15
備 考:本邦初訳・翻訳権所有
文庫版あり秋元文庫翻訳ものシリーズC4
 この『十七才のデイト』は、女子高校生トベイを主人公にした高校小説シリーズ「トベイ・ヘイドン物語」(三部作)の第1冊目で、ロサモンド・デュ・ジャーディン女史の処女作であり、すばらしい人気を呼んだベスト・セラーです。
『クラス・リング』『ボーイフレンド』はその続篇です。
    主 要 人 物
トベイ・ヘイドン ― この物語の主人公。16才と5ヵ月になる少女。ヘイドン家の4人姉妹の3番目の子。少しおませだが、ウィットとユーモア感覚に富んでいる。
父 ――― 水道工事部品のセールスマンで、よく出張旅行に出かける。ユーモアを好む。
母 ――― やせたくて時々菜食主義を実行するが長つづきがしない。トベイたちにはやさしいママ。
ジャネット ― トベイの長姉。碧色の瞳の美人。土木技師ジミー・クラークと結婚、3才の坊やがあるが、未だ新婚気分消えやらず、トベイたちを悩ます。
アリシャ ─― トベイの次姉。20才。
マジョリー・ミッジ ─ トベイのおしゃまな妹。8才。
ブローズ・ギリマン ― トベイのボーイ・フレンド。やさしく思いやりのあるスマートな少年。本文ではギルマンになっている
アダム・ウェントウォースアリシャと婚約している医学生。父は町で一番のデパートを経営している。
テス・ウェントウォース ── アダムの伯母。古風で世間知らずの老婦人。
ケンタッキー・ジャクソン都会的に洗練された美人。グリーン湖に避暑にやってきて、夏中ブローズたち少年の人気を独占し、トベイたちをくやしがらせる。
バービー・ウォルターズトベイの仲良しの女の子。
   裏 表 紙 解 説 よ り
 私の名はトベイ・ヘイドン。ヘイドン家4人姉妹の3番目の女の子で、今少しで17才──正確に言えば16才と5ヵ月になる高校生である。両親健在で、茶色の眼は母親ゆずりだが、おきゃんでウィットとユーモアに富んでいるのは父親似らしい。
 一番上のジャネット姉さんは、土木技師と結婚して3才の坊やまであるが、いまだに新婚気分で、2、3日前から夫の出張旅行だというので里帰りをしているが、まるで何年も逢えないみたいなしょげぶりである。女は結婚するとこんなにも変わるものだろうか? 姉さんを見ているとまったく不可解だし、こっけいでさえある。
 次姉のアリシャは20才、アダムという医学生と婚約中だが、しょっちゅう喧嘩ばかりしているかと思うとケロリと仲直りをする。大人のすること言うことすべてが理解に苦しむほかない。
 もっとも私にもブローズというボーイフレンドがある。映画俳優みたいにスマートな少年で、じつのところ私は彼に夢中なのだが、まだ本心を打ち明ける時機でないと自重している。私は元日に、いつまでも二人が仲良しの証拠に、9月になっても私たちの気持ちがいまと同じようだったら、ブローズからクラス・リングを受取る約束をした。クラス・リングとは婚約指輪(エンゲージ・リング)に近いもので、エッジウッド高校では卒業のとき成績のいい生徒に卒業年次と名前を彫りこんだクラス・リングをくれることになっているのである。
 ブローズとの約束は私を有頂天にさせた。私は二人の愛は永久に変わらないものと信じて疑わなかった。しかし人生とはままならぬものである。思いがけない事件が夏休みに発生して、私を苦しめ悩ますことになった………
  巻 末 解 説 よ り
 この小説は、1943年に初版が出ていますが、形式からいっても、内容からいっても、もっとも新しいアメリカの少女小説の一つの傾向を示しているように思われます。つまり、結論的にいうと、アメリカにも、ついにリアリズムの少女小説がうまれた、ということです。初期の教訓物語の時代から、ロマンス主義の時代をへて、ほんとうに文学の名に値いするような少女小説がうまれてきたということは、ながいあいだアメリカの文学に強い関心をいだきつづけてきた私どもにとっても、こんなうれしいことはありません。
 もちろん現在でも、筋だけのおもしろさをねらったものや、くすぐりだけのユーモア小説や、かなしませるだけが目的のようなお涙ちょうだい小説や、荒唐無稽な空想小説なども、たくさん出ています。しかし、そういう種類の小説は、少女小説の主流からは、だんだん遠のいて、若い読者からも、あまり歓迎されていないのが現状のように思われます。
 このような新しい傾向の一つの見本として、ロサモンド・デュ・ジャーディン女史の「十七才のデイト」をここに訳出してみました。
 アメリカの典型的な中産階級の家庭生活が、ここではあつかわれています。この家庭に育った3人姉妹の2番目原文のままの娘、トベイという17才の少女が主人公ですが、このトベイを中心にして、姉妹間の微妙な愛情や、高校生どうしの、これまた、より以上微妙な友情が、じつに生き生きと描かれています。嫉妬、虚栄、あこがれ、反抗など、17才という年齢が、かならず一度は通過するであろう感情の世界の明暗と起伏も、あますところなく、えがき出されているように思われます。足はまだ子供の世界の土をふんでいるのに、顔だけ大人の世界にはいりこんでいる17才という年齢が、人生で、どういう時期にあたるのかを、この小説はしみじみと考えさせてくれるようです。
 なお、この「十七才のデイト」(Practically Seventeen)は、トベイ・ヘイドンを主人公にした三部作「トベイ・ヘイドン物語」の第一作で、つづいて発表された「クラス・リング」(Class Ring)「ボーイ・フレンド」(Boy Trouble)二作と共に、ロサモンド・デュ・ジャーディン女史の作品のなかでも、もっとも評判の高い、そして、もっとも多く読まれているものです。訳者は、折りをみて、ぜひこの三部作全部を訳出したいと考えております。
1957年2月
大 久 保 康 雄


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