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表 紙 説 明
秋元書房ジュニアシリーズ11
書 名:若い娘アリアーヌ  原題:ARIANE, jeune fille russe
著 者:クロード・アネ      訳:斎藤磯雄
初 版:S31.09.25
備 考:ジュニア・シリーズには珍しい黄緑の背表紙、
     他にはNo25の激流≠フみ
     本邦初訳
     映画「昼下がりの情事」(1957年・アメリカ)の原作
       主演:オードリー・ヘップバーン、ゲーリー・クーパー
これはいままでの小説よりもレベルの高い、高校生上級生から大学生向きの小説です。
 これは、冒険はしても恋愛の意味、情熱と義務をわきまえた恋愛教科書と言えるでしょう。―まだ女子大生のアリアーヌは「貴方は私にとって8番目の恋人よ」と言って相手をびっくりさせたりしますが。―
 ペッシィがアメリカの女学生の考え方と生活をよく代表しているとすれば、アリアーヌはヨーロッパの考え方をよく現している。
第一次大戦後の開放された女子大生アリアーヌは、若い男性を相手にかなり冒険的な行動に出るが、最後に自分を託するに足る男性を見つけるまで純潔を保って行く。
 知性があり、自信のあるものにだけ許される行動を、未熟な女学生が真似るべきではない。しかし、ぎりぎりの線でどのように切りぬけるか、恋愛とは何を意味するか、情熱と義務、恋愛と実社会の相剋など、スリルに富んだ物語である。

 フランスでもの凄い人気を呼んだこの小説は女子学生アリアーヌの青春の記録です。彼女の人生観・恋愛観とその自由で大胆な行動は現代の学生の一つの典型として、賛否両論の渦をまきおこすにちがいありません。
最近では、ハリウッドでオードリー・ヘップバーンが主演で映画化が進められています。(当時の記述のまま)
『風と共に去りぬ』の訳者、大久保康雄先生は
 「ヒロインのアリアーヌは、現代女子学生気質を描き出してまことに面目躍如たるものがある。彼女のわりきった人生観、大胆で行動的な性格は、ちょうど、『風と共に去りぬ』のスカーレットを思わせるものがある。スカーレットよりさらに現代的で、魅力的な知性と美貌にめぐまれたアリアーヌが、この物語でくりひろげる「生活と意見」は、若い読者にセンセーションを呼ぶにちがいない。物語の構成と言いユーモアとウイットに富んだ筆致と言い、一度読みはじめたらやめられないほど面白い小説だ。ベスト・セラーになったわけがなるほどとわかった。さすが現代フランス文壇きっての老練作家クロード・アネの手になる作品だと感服させられる」と絶賛されています。

フランス文学界の第一人者たる訳者の斎藤磯雄先生は
 「女子学生アリアーヌの溌剌として大胆な行動は、習俗に反抗する当時のアプレ・ゲール的風潮の先駆者として、多くの物議をかもしたが、その強い意志の力と知的な純潔には魅力がある」といわれています。

女優の有馬稲子さんは
 「この小説の魅力の中心は、ヒロインの女子学生アリアーヌの個性美に溢れた性格だろうと思います。奔放で大胆な彼女の行動は、一見無軌道のようでありながらそのうらにはチャッカリ計算された彼女の人生設計がかくされており、したいことをするといういわゆる太陽族やアプレとは似て、まったく非なる良識と意思力と知的な純潔が光っていると思います。ハリウッドでは、オードリー・ヘップバーンがこのアリアーヌに扮して目下撮影中ときいております。ヘップパーンが、どのようにこの個性美のあふれた性格をスクリーンに再現するか楽しみです。」と述べています。
訳者 解説より
『若い娘アリアーヌ』ARIANE, jeune fille russe が初めて発表されたのは第一次大戦後間もなく1920年であり、作者が全く予期しなかったほど広く読まれ、多くの反響を生んだらしい。メレジュコフスキーやアレクセイ・トルストイを始め、当時祖国の革命を逃れてフランスに亡命していちロシアの文豪はこぞって賞讃の筆を執り、特にメレジュコフスキー夫人ヒッピウスの如きは、『世界の基礎は変ろうとしている』という一文の中で、女性の立場からこの小説を論じ「アリアーヌは、実在の人物とすれば、一国民の問題を超えている」と書いて、新しいジェネレーションの到来に世人の注目を促した。
 女子学生アリアーヌの溌剌として大胆な行動は習俗に反抗する当時のいわゆるアプレ・ゲール的風潮の先駆として、多くの物議をかもしたらしい。しかし第二次大戦後の今日から見れば、アリアーヌはむしろその古典的な性格、すなわち、強い意志の力と、知的な純潔によって魅力がある。作者みずからこの女主人公を評して「すばらしい努力をすることの出来る実に確乎たる性格の娘、要するに女の英雄」と言ったのも、あながち単なる自画自讃ではない。


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