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表 紙 説 明
秋元書房ジュニアシリーズ 2
書 名:ナンシー姉さん   原題:Mother Carey's Chickens
著 者:ケート・ウィギン     訳:村岡花子
初 版:S31.01.25
備 考:本邦初訳
 こんなお姉さんがあったらどんなにステキでしょう。
お父さんが亡くなったけどケリー一家には明るい文学少女のナンシーがいます。

お父さん亡き後のケリー一家に起つた数々の事件。お母さんと長女ナンシーは小さい弟妹と共に世の荒波と戦います。愛情豊かな作品です。
 雑誌「スタイル」評―ウィギン女史の代表作の一つで海軍大佐の父を喪ったケリー一家が、美しくて愛情こまやかな母親を中心に、世の荒波を乗りきって行く物語なのですが、中心は長女のナンシーです。明るいぴちぴちした文学少女で、二人の弟と一人の妹の世話をみて母親を助けます。アメリカの家庭生活の人間的な面がこれほど美しく描かれた物語は少ないといっていいでしょう。未亡人とその一家を見まもる人情の機微もほほえましく、よくいわれる「アメリカのよき時代のよき家庭」という意味が、この物語を読んでひとしお感銘されるにちがいありません。訳者が作者に寄せる深い愛情がこの飜訳小説をいっそう美しい作品に結晶させています。
    主 要 人 物
ケリー夫人 ―― 美しい未亡人。海軍大佐だった夫との間に4人姉弟の子供があり、ケリー母さんと愛され尊敬されている。わけへだてのない深い愛情の持主。
ナンシー ―― ケリー家の長女。美人系の両親の血をうけ、美貌と文才に恵まれた明朗な少女。父の急死後、ケリー母さんを助けて世の荒波とたたかう決意をする。
ギルバート ―― ケリー家の長男。
キャスリーン ─― 次女。愛称キティとよばれる金髪の美しい少女。
ピーター ─― 末っ子で甘えん坊の少年。
アラン・ケリー ―― ナンシーたちの父方の叔父。
ジュリア ─― その一人娘。ナンシーたちの従妹。おしゃれで見栄坊。ケリー家にひきとられる。
アン・チャドウィック ― アン小母さん。口やかましい老嬢で、ケリー家の面倒をよくみるが、みんなから毛嫌いされている。
ビル・ハーモン ―― ビューラ村の商人。ケリー家の良き隣人。
オシュ・ポファム ― ビューラ村の陽気なよろず屋商売の男
レミュエル・ハミルトン ― ドイツ駐在のアメリカ領事。孤独で不遇な外交官。ビューラの「黄色い家」の持ち主。
トム・ハミルトン ― その次男。茶の栽培研究のため中国にいる。
ヘンリー・ロード ― ビューラの村外れに住むへんくつな学者。
オリブ ―― その長女。絵画の才能に恵まれた黒い瞳の少女。
シリル ―― その弟。ひよわで臆病な少年。
『ナンシー姉さん』の作者、ケート・ダクラス・ウィギン女史は、1856年フィラデルフィアに生まれ、1923年67才で亡くなるまで、少年少女を主題にした多くの美しい作品を書き、『若草物語』のオルコット女史と共に、その作品はアメリカ家庭小説の傑作として、世界中で愛読されています。
『ナンシー姉さん』“Mother Carey's Chickens”は、『少女レベッカ』とならんで、ウィギン女史のたくさんの小説のなかでも、もっとも有名で、またもつともすぐれているものです。美しいそして賢明な愛情に満ちあふれたケリー母さんの愛の翼のかげで、ナンシー、ギルバート、キャスリーン、ピーターの四人姉弟といとこのジュリアは、すこやかに育っていきます。愛とユーモアに満ちた、この愉快な心あたたまる物語をお読みになったみなさんは、きっとあのなつかしいホーム・ソング「ホーム・スイート・ホーム」を口ずさみたくなるにちがいありません。
 これは、愛と信頼でかたくむすばれた家庭の幸福感をしみじみと味わせてくれる作品です。民主主義的な家庭生活のあり方についてもいろいろと考えさせられ、教えられる物語です。『ナンシー姉さん』1911年発表されると、すばらしい評判人気をよび、劇になってたいへんな歓迎をうけました。あるアメリカの批評家は、ウィギン女史についてこう言っています。「彼女はロマンティストであるが、そのロマンスは、たわいのない夢が織りなすロマンスではなくて、日常生活のホームスパンの糸が織りなすロマンスである……」。女史の作品が若い読者をいつまでもあたたかくとらえて放さないのは、それがホームスパンであるからなのです。


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