表 紙 説 明
YOUNG・シリーズ E65


書 名:小説 赤胴鈴之助
著 者:武内つなよし  カバー:植木金矢
初 版:S53.05.31
備 考:表記なしのYOUNG・シリーズ
   「小説 赤胴鈴之助」について あとがき≠謔
 数年前ブームとなった、拙作のマンガ〈赤胴鈴之助〉をいつかは小説に書いてみたい、というのが私の、年来の夢であった。
 今回その夢がかなえられ、この喜びを、どう表現したらいいか分からないほどである。
 マンガでは、主人公鈴之助の生い立ちなど、極めてあいまいなものだったし、各登場人物の性格づけや心理の描写となると、残念ながら中途半端だったように思えて仕方がない。
時代考証に至っては、いい加減なものだ、という批判を免れないだろう。
 が、それはそれとして、マンガの赤胴鈴之助は、ちょっとしたブームになったのだから、当時、マンガとしては結構、おもしろかったのではなかろうか。
 しかし、作者としては未だに、マンガの〈赤胴〉に対して、かなりの不満を持っている。
 小説〈赤胴鈴之助〉の執筆にあたって私はマンガでは表現し得なかった不満を、なんとか取り除いてやろう、と心に決めて原稿用紙に向かった。
 まず小説〈赤胴〉は、時代考証に気を配りながら筆を進める事とし、老中水野忠邦の天保改革を、物語の背景にすえた。
 そして更に、葺屋町、堺町の両町にまたがる、いわゆる二丁町の、芝居町の火災という歴史上の事実を、小説のクライマックスに挿入した。
 架空の物語に史実をからませたのは、フィクションの小説世界で、少しでも、時代の息吹きが実感されれば、……という願いからであった。
 登場人物の性格及び心理の描写、人間の関係等々、それらの描出には、私なりに努力したつもりだが、さて、その辺はどうであろうか。
 なにはともあれ、小説〈赤胴鈴之助〉によって、鈴之助の生い立ち、父の形見の赤胴のいわれなど、マンガではあいまい≠セった事柄を明らかにすることができた。
 この点にかぎっては、決定版ということにしたい。
     《後   略》
武 内 つ な よ し