表 紙 | 説 明 |
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秋元文庫翻訳ものシリーズC5 |
書 名:はつ恋 原 題:First Love,True Love 著 者:アン・エマリイ 訳:中村能三 初 版:S48.11.30 備 考:翻訳権所有 B6判あり 秋元書房ジュニア・シリーズ40 |
アランデール高校の卒業舞踏会は、今年も華やかに行われた。 3年生のパットは、今年卒業する4年生のティムと踊りながら夢見るような気持ちだった。大学へ行くティムとステディの約束をかわし、両親の諒解を得たばかりであった。 高校随一の花形選手である兄のマイクも、パットの親友コニーと幸福そうに踊っていた。二人の仲は、パットの苦心のかいあって急速に接近しつつあるようだった。 なつかしい高校生活のかずかずの思い出をこめて、卒業舞踏会の夜は静かにふけていく。 ティムがパットに頬をすりよせてきて、やさしくささやいた。「はつ恋、ほんとうの恋。」…… | |
主 要 人 物 パット・マーロウ ―― アランデール高校3年生。 マイク・マーロウ ―― パットの兄。アランデール高校4年生。野球、蹴球、バスケットの選手で、女学生の人気の的。 デニー・マーロウ ―― パットの弟。 ティム・デイヴィス ― パットのボーイフレンド。アランデール高校4年生。 コニー・レイド ――― パットの親友で、気立てのよい女の子。 ダルシー・コナー ―― パットの同級生でコケティッシュな女。つぎつぎとボーイフレンドを変える。 ケニー ――― アランデール高校を卒業し、いまは大学生。パットのデイトの相手であった。 ブランチ・シューメイカー ― バロン百貨店の売り子。小説家志望。 |
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裏 表 紙 解 説 よ り アン・エマリイ女史の書く小説は、ほとんど全部、アメリカの地方都市の中流階級の家庭が舞台になっております。自由ではありますが、相当にしつけがやかましく、ニューヨークとかその他の大都市を背景にしとた映画などを見た目では、ふしぎなほど堅実な生活をしている人たちです。そして、母親の年代の人たちは、若い人たちが、あまりに早く、「ステディ」になるのを非常に心配しています。相手の人間をよく見極める時日もなく、ほかの人たちと比較することもなく、いわば若気のいたりで、そういう決まった間柄になるのを恐れるからです。そのため、子供の生活には、かなりきびしい態度で臨みますので、もはや大人になりつつあると思っている子供たちは、こうした両親の監督なり警戒に、反撥をかんじ、もっと完全な自由を持ちたいと願います。 この「はつ恋」のパットは、自分でなんの取得もない人間だという、ある劣等感を常にいだいています。これは、アン・エマリイ女史が好んで登場させる女の子で、いわば現代の女の子の代表だろうと思います。そして、なんの取得はなくとも、人間的に立派でありさえすれば、幸福になれることを強調しています。しかも、決してお説教じみない、いろんな愉快な事件をとおして。 『はつ恋』は、アン・エマリイ女史の作品としては、非常に情緒的な香りのたかいもので、前2作(『サリーの高校生活』と『ゴーイング・ステディ』)とはまた違った意味で、みなさんに愛読していただけるものと確信しております。 |